肝臓の病気

A型肝炎

病態

A型肝炎ウィルスの感染による肝炎です。伝染性が高く、飲料水などから集団発生することがあります。慢性化,再発,劇症化はごく稀。

症状

インフルエンザ様(発熱,全身倦怠感,不定消化器愁訴,筋肉痛)症状で始まり、徐々に黄疸,皮膚のかゆみなどの症状がでます。

検査

血液検査による肝機能検査と血清中のIgM 型HA 抗体の証明にて確定診断できますが、抗体検査の結果が出る頃には症状は緩解していることが多いです。

治療

一般的に保存的治療。安静にし食事(高カロリー高たんぱく食)療法。

薬剤性肝障害

病態

薬剤のほとんどは、肝細胞で代謝されます。薬剤性肝障害の原因の1 つは薬剤そのものもしくはその代謝産物が肝障害を起こす場合。もう1つは薬物の代謝産物あるいはそれが肝細胞のたんぱくなどとの結合でできる化合物に対する過剰反応で肝障害を起こす場合です。
薬剤そのものが肝障害を起こすことは近年の薬剤副作用の厳しい検査によって使用されなくなってきています。しかし代謝産物などによる障害は過敏反応も代謝も人それぞれですから、予測できず肝障害が起こります。また原因の薬剤を見つける検査法が無いため投薬開始から肝障害発生までの経過によって因果関係を推測し、薬剤中止後の肝障害の改善を確認することが必要です。
もし知らないで原因となった薬剤を再び服用すると、2 回目以降の服用で強い肝障害を起こします。疑わしい薬剤の再使用は避け、どうしても必要なときは肝機能を検査しながら服用する注意が必要です。

症状

薬剤性肝障害に特徴的な症状はなく、新たな薬剤を服用したときに何か症状が出たときは医療機関への受診が必要です。薬剤性肝障害で比較的多い症状としては、肝障害の程度にしたがって強い黄疸がみられ、それが長引いたり皮膚にかゆみが出たりします。また薬物へのアレルギー反応として発熱や発疹がでる
こともあります。

検査

通常の肝機能検査の中で、GOT,GPTの上昇に比べてアルカリフォスファターゼとγ-GTPの上昇がはっきりしている場合や、血液の好酸球が増えている場合は可能性が高くなります。薬剤アレルギーの診断の為、疑われる薬剤へのリンパ球刺激試験を行なうこともあります。

治療

原因薬剤の中止。ステロイド療法。

B型肝炎

病態

B型肝炎ウィルスの感染による肝炎です。母親からの感染(出産時)や輸血を介しての血液感染,性行為感染が主。

症状

80~90%は無症状に経過するが、残りは慢性化,劇症化,肝細胞癌に発展する。
慢性肝炎の症状(肝機能異常がひどくなると)インフルエンザ様(発熱,全身倦怠感,不定消化器愁訴,筋肉痛)症状で始まり、徐々に黄疸,皮膚のかゆみなどの症状がでます。
B型の劇症化の割合は劇症肝炎の7割と高い。

検査

血液検査による肝機能検査と血清中のHB 抗原、HB 抗体の証明にて確定診断できます。またさらに詳しくみる事により感染力の強弱や現在,既往の感染が診断できます。

治療

症状のある時は、一般的に保存的治療。安静にし食事(高カロリー高たんぱく食)療法。

脂肪肝

病態

肥満者の約20%が脂肪肝といわれています。食べ過ぎなどで肝臓で過剰の中性脂肪ができ、それが肝細胞内に蓄積され脂肪肝がおこります。以前は脂肪肝は正常な肝臓に脂肪がたまっただけで肝臓は悪くならないと考えられていました。
しかし食事の欧米化にともなって日本人でも高度な脂肪肝が確認されるようになり、蓄積した脂肪が肝細胞に障害を与えることがわかってきました。また薬剤やアルコールが原因で脂肪肝になる場合もあり、病状が進行することがあります。脂肪肝を起こす生活習慣は糖尿病,高脂血症などの生活習慣病につながる可能性が高いので生活習慣を見直す必要があります。

症状

通常無症状です。検診等で指摘されわかります。

検査

肝臓内の脂肪の沈着は腹部超音波でわかります。
ただし脂肪沈着があっても他の原因で肝機能異常をおこしていることもあるので、肝炎ウィルスなどを検査する必要があります。

治療

脂肪肝は可逆的で病因の除去にて改善されます。

劇症肝炎

病態

急性肝障害による重篤な肝疾患で肝不全と意識障害を主徴とする。発症後10日以内に脳症が発現するものを急性型,それ以後に発症するものを亜急性型と分類する。B 型肝炎ウィルスによるものが最も多い。生存率約20%と予後不良である。

症状

全身症状としてインフルエンザ様(発熱,全身倦怠感,不定消化器愁訴,筋肉痛)症状で始まり、症状の重篤化により高度の黄疸,肝性口臭,腎不全を合併し乏尿を来たす。神経症状として意識障害(肝性脳症),羽ばたき振戦を呈する。

検査

肝不全症状
  • 血液検査で増加するもの・・・分解・異化の障害
  • 血液検査で低下するもの・・・肝での合成障害
重症度の指標
  1. プロトロンビン時間延長(出血傾向)≦40 %
  2. アルブミンの低下<2.5g/dl
  3. 腹水,浮腫,肝性脳症
  4. 肝細胞量(コリンエステラーゼ)減少
  5. エステル型コレステロール減少
  6. LCAT 減少
  7. 血中アンモニア上昇\
  8. ビリルビン上昇

治療

劇症肝炎の死亡原因
  1. 感染症(肺炎,敗血症)
  2. 腎不全
  3. 消化管出血(胃腸の出血のコントロールがつかなくなります)
  4. DIC (播種性血管内凝固)(出血が止まらなくなります)

治療は肝臓に対するものだけでなく、全身管理が必要

  1. 透析,血漿交換,交換輸血
  2. ステロイド・・・肝細胞壊死の抑制を図ります
  3. 脳浮腫の予防や改善
  4. 肝再生
  5. 肝性脳症に対する治療

肝血管腫

病態

肝臓にできた血まめです。

症状

通常無症状です。検診等で指摘されわかります。

検査

血管腫は腹部超音波やCT でわかりますが、肝細胞癌との鑑別が重要です。
鑑別が困難の場合血管造影検査やMRI 検査が必要な場合があります。

治療

通常必要ありませんが、圧迫症状が強い場合は切除や放射線治療が選択される場合もあります。

自己免疫性肝炎

病態

40歳以降の女性に多く見られます。自分の肝細胞に対して免疫反応が起こり、肝細胞が破壊され続けて慢性肝炎になります。ウィルス性肝炎より進行が早く、発症して早期に肝硬変になることがあるので適切な時期に治療を受けることが必要です。

症状

黄疸,腹水,出血傾向など。早期に肝硬変に移行する。また、約半数が他の自己免疫性疾患を引き起こし関節痛や月経異常を伴うことがあります。

検査

免疫異常(免疫のシステムが正しく機能せず、過剰な反応をしたり自分自身に対して攻撃をしてしまう)を示す自己抗体(抗核抗体)や慢性肝炎を示す血清免疫グロブリン濃度を調べます。

治療

ステロイド治療が有効。

肝膿腫

病態

肝臓内に膿瘍(膿み)が形成されたもので、化膿性肝膿瘍とアメーバ性肝膿瘍があります。

症状

初発として悪寒,戦慄,発熱がある。右の脇腹の痛みや腫張も起こる。

検査

血液検査にて炎症所見の上昇,胆道系酵素の上昇。CT,腹部超音波にて肝臓内の膿瘍の確認。

治療

  • 化膿性の場合は抗生物質,超音波にて経皮的に膿瘍のドレナージ(膿みを体外へ出す)
  • アメーバ性の場合はメトロニダゾールという虫下しの薬剤投与と超音波にて経皮的に膿瘍のドレナージ(膿みを体外へ出す)

肝硬変

病態

肝細胞の高度の線維化が進み肝臓が硬くなることで肝臓に流入する門脈の血液量が減り、その分食道や、胃の静脈に過剰な量の血液が流入し静脈を拡張させます。(静脈瘤)

症状

  • 肝硬変の代償期
    初期は自覚症状なく日常生活を送れます。
  • 肝硬変の非代償期
    病気が進行すると全身倦怠感,疲労感,腹部膨満感,食思不振などの訴え、さらに進むと黄疸,精神障害,腹水,筋萎縮などの栄養障害がでます。ホルモンの代謝異常から手掌紅斑(手のひらが赤くなる)やクモ状血管腫(腹部の皮下静脈の拡張)が出てきます。男性では女性化乳房(女性のように乳房が膨らむ)が見られることもあります。

検査

健康な肝臓とどの位肝機能が低下しているのか(肝の予備能)を知る為に肝細胞がつくるタンパクでるアルブミンと血液凝固因子の量を調べます。肝予備能にしたがって上昇するビリルビンの数値も重症度を知る参考になります。栄養代謝の状態を知るにはアルブミン,アミノ酸,アンモニア,血糖などを調べます。また胃カメラ(上部内視鏡検査)により食道や胃の静脈瘤の有無や状態を調べ出血の起こり易さを定期的に観察します。また肝細胞癌の合併を早期に発見する為定期的な腹部超音波検査を施行します。

治療

  • 肝硬変の代償期
    安静,高蛋白高カロリー食,肝庇護剤の投与
  • 肝硬変の非代償期
  1. 浮腫,腹水の治療(食塩制限,血漿タンパクの補給,利尿剤投与)
  2. 消化管出血に対する治療
  3. 肝性昏睡に対する治療

要するに肝硬変になってしまうともう肝臓は正常には戻らない為、保存的な対症療法しか治療法はないのです!肝硬変になる前になんとしてもくい止めねばなりません!

肝嚢胞(かん・のうほう)

病態

いわゆる肝臓にできた水の貯まりです。

症状

通常無症状です。検診等で指摘されわかります。

検査

のう胞は腹部超音波やCTでわかります。

治療

特に必要ありません。

肝細胞癌

肝硬変から移行します。原因としてはB型肝炎ウィルス関連が約17%。C型肝炎ウィルス関連が約76%といわれておりこの2 つの感染の持続が原因のほとんどです。このどちらかに感染している場合は肝細胞癌の可能性を視野に入れて診療を受ける必要があります。

症状

特有の症状があるわけではありません。ですから肝硬変や慢性肝炎で診療を受けている場合は肝細胞癌を早期に発見する為に定期的検査が必要になります。

検査

  • 血液腫瘍マーカー(α-フェトプロテイン,PIVKA-)
    癌細胞がつくるたんぱく質が血液中に分泌され、そのたんぱく質の血液中での濃度が上昇することによって、癌の存在を知ることができます。
  • 画像検査(癌の腫瘤や転移を見つける為)
    腹部超音波検査,CT ,MRI

治療

  • 外科的切除
    肝細胞癌が同一肝区域内に存在することや、腹水,肝性脳症のないこと,また切除後の肝機能が保たれることが必須条件となる。
  • 経カテーテル的肝動脈塞栓術(TAE )
    肝細胞癌の主たる栄養血管である肝動脈を薬物で塞栓し癌細胞を兵糧攻めにする方法で同時に抗がん剤を注入することもある。
  • 経皮的エタノール注入療法(PEIT )
    超音波で観察しながら皮膚より癌細胞へ針を刺しエタノールを注入させ、癌細胞を壊死させる方法。

門脈圧亢進症

病態

門脈系の血行障害により門脈圧が異常に上昇している病態。

症状

  • 側副血行路の発達(本来肝臓に流れ込む血液がうまく流れにくい為に多臓器への血液が増量してしまうこと)
    ・食道・胃静脈瘤
    ・腹壁静脈怒張(へそ周りの皮下の血管が怒張する)
    ・内痔核(いわゆるイボ痔)の発達
  • 脾腫・脾臓機能の亢進・・・血球の破壊
  • 腹水
  • 肝不全・肝性脳症

治療

静脈瘤と肝硬変の治療が主体となります。

内科的治療
  1. 肝不全の防止
  2. 門脈圧の降下剤
  3. 食道静脈瘤に対しての処置
外科的治療
  1. 食道静脈瘤に対して食道離断術
  2. 門脈圧減圧術
  3. 脾臓摘出術・・脾臓機能の亢進・・・血球の破壊に対して

アルコール性肝障害

病態

長年にわたる過剰のアルコール摂取でおこる。アルコールの直接の肝障害に加えてアルコールの代謝産物である「アセトアルデヒド」が肝障害を起こします。
この代謝産物はアセトアルデヒド脱水素酵素で無害化されますが、遺伝的にこの酵素がない人や低下している人がいます。このような人はたとえ少量の飲酒でも肝障害を起こします。また逆に多飲する人でも肝障害がアルコールによるものと断定するのは危険です。肝炎ウィルスの感染など他の原因を調べることや禁酒により肝機能の改善があるかを確認することが必要です。

症状

飲酒量が急激に増えるとアルコール性肝炎になります。腹痛,発熱,黄疸を引き起こし重症の場合は肝不全や腎機能が悪化し、死に至ることもあります。飲酒を続けると脂肪(アルコール性脂肪肝)や線維質(アルコール性肝繊維症)が肝臓に沈着されるようになります。この時期は主に無症状ですが、さらに繊維化が増えて肝硬変になると肝不全の症状がでてきます。また食事をしないで飲酒するとことによって栄養障害が症状として出ることがあります。

検査

他の肝障害と比べてアルコール性肝障害は肝機能検査の中でγ-GTPの上昇が目立ちます。ビリルビン高値,血液凝固因子の低下,白血球の増加は重症の目安になります。

治療

禁酒が第一。その他、低脂肪食,肝庇護剤。

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