胃カメラを楽に受けるには

胃カメラを楽に受けるポイントは「適切な前投薬」

胃カメラを楽に受けるにはどうしたらいいのでしょうか?

ポイントは(1)適切な前投薬と(2)熟達した挿入技術です!!

内視鏡を専門とする医師であれば、「熟達した挿入技術」は当然と考えます。一番問題となるのは「適切な前投薬」です。

前投薬とは検査の前に使用する薬のことを言います。

「大病院で、専門医の胃内視鏡検査を受けたが、検査はかなり苦しかった。」という話を患者さんから聞くことがあります。医療側の反論としては、『件数に追われて、忙しくていちいち楽さなんて追求できない!』『回復室がないので薬を使って楽に検査をしてあげたくてもできない』なんて言葉もちらほら聞きます。

苦痛のない胃内視鏡検査には、前投薬が一番大切です。しかしこの違いを知らない方が多いのです。

胃カメラの前投薬には、4つの使用レベルがあります

そこでわかり易いように以下の4段階に分けて説明しましょう。

前投薬(安定剤)の使用レベル

レベル 投薬内容
レベル1 前投薬は咽頭麻酔のみ(キシロカインビスカス)
レベル2 咽頭麻酔の他に 軽度の鎮静剤を使用
レベル3 咽頭麻酔の他に やや多めの鎮静剤を使用
レベル4 咽頭麻酔の他に かなり多めの鎮静剤を使用
鎮静剤:
・ベンゾジアゼピン系抗不安薬:
diazepamもしくはflunitrazepam
・麻薬性製剤:塩酸ペチジン

レベル1:前投薬は咽頭麻酔のみ

咽頭(ノド)の麻酔は、ゼリー状の麻酔薬(キシロカインビスカス)をスプーンなどで、ノドに流し込み、これを飲み込まずに5~15分間、ノドに留めておく方法が一般的です。この麻酔自身、時間が長く、患者様から嫌われることも多いのです。うまく出来ないと、肝心のノドの奥はしびれずに、口の中がしびれてしまいます。また、このゼリー状の麻酔薬は使用せずに、スプレー式の麻酔薬(キシロカインポンプスプレー)のみを使用する施設もあります。口を開けていただき、シュッ、シュッと3~5回ノドに薬を吹きかけるだけです。30秒~1分で終わります。

このノドの麻酔だけでも胃内視鏡は可能ですが、喉の敏感な人でなくてもやはり苦しいもので、妊婦さんとか、検査終了後にすぐ帰りたい人などに限られるべきだと思います。多くの入院施設のないクリニックや開業医の先生はこの方法であると思われます。

→この検査方法だとやっぱり苦しいです!

レベル2:咽頭麻酔の他に軽度の鎮静剤(麻酔薬ではありません)を使用

具体的には (1) セルシン(ホリゾン)3~5mgの静脈注射 (2) オピスタン35mgの静脈注射 (3) ロヒプノール(サイレース)0.2~0.4mgの静脈注射などを使用します。この程度では少し頭がフワフワしますが、意識は、ほぼ正常に保たれ、検査中のことはほとんど覚えています。一般的に大病院などで行われている前投薬はこのレベルが多いのです。

ただし、このレベルでは、ノドの敏感な患者さんは検査を苦痛と感じ、ゲーゲーすることがあります。検査後は頭のぼっーとする状態が取れるまで回復室のベットで休んでいかれることが望ましいのですが、多くの施設が回復室は完備していない為、患者様に楽に検査をやってあげたいのに、どうしてもこの方法ができないという問題点があります。

レベル3:咽頭麻酔の他にやや多めの鎮静剤(麻酔薬ではありません)を使用

具体的には (1) セルシン(ホリゾン)5~10mgの静脈注射 (2) ロヒプノール(サイレース)0.6~1.0mgの静脈注射などを使用します。

ただし、これらの鎮静剤の効き具合は、個人によりかなり差がありますので、患者様と会話しながら、少しずつ注射をしていきます。このレベルでは患者様は、医者と会話が出来、「口を開けて下さい。」とか「飲み込んでください。」などの指示にしたがってくれますが、検査中の記憶はほとんどありません。ですから、「検査が終わりましたよ」と言うと、「エッ、もう終わったのですか?」とか、なかには「これから検査ですか?」と言われる患者様も多くいらっしゃいます。以前に胃内視鏡検査を受け、苦しい経験をされた方や、ノドの反射の強い方は、このレベルの前投薬をお勧めします。

レベル4:咽頭麻酔の他にかなり多めの鎮静剤(麻酔薬ではありません)を使用

完全に深い睡眠に入り、医師と患者さんは一切会話はできません。このレベルでは、呼吸抑制が起きる可能性が高くなります。また目が覚めるまでに長時間かかりますので、一般的な胃内視鏡検査では、このレベルまでの前投薬は必要ないと思われます。

前投薬、賛成か、反対か?

「前投薬のレベル」でご紹介したように、胃内視鏡検査の前投薬にはいくつかのレベルがあります。では施設によってなぜこの前投薬のレベルが違うのでしょう?それは、先生の前投薬に対する考え方や医療機関の環境などの違いによって、変わってくるのです。前投薬賛成、反対の先生の意見をいくつかあげました。

前投薬使用賛成派の先生の意見

  1. 検査は楽に受けたい(いくら上手な先生でも反射は必ず起きる)
  2. 辛くない検査ならば定期的に受けることができる。それにより病気の早期発見が可能である
  3. リスク(呼吸抑制による事故)と言っても、きちんと対策を練り対処すれば事故は防げる
  4. 非検者が辛くないためゆっくりと十分に胃の中を観察できる

前投薬使用反対派の先生の意見

  • 安定剤の静脈投与による呼吸抑制などの合併症が問題
  • 薬をつかうと検査を終了した後に休む部屋が必要である。(施設にスペースの余裕がない)
  • 上手な検者ならば楽に検査をすることができるのでなにも薬を使うことはない

調査結果:約8割の方が前投薬使用の検査を望んでいる

胃腸.jpのアンケート調査で、「前投薬を使用しての胃カメラ検査をどう思うか」集計を取りました。 約80%の方が安定剤使用の楽な胃カメラ検査を希望している、結果となりました。 そしてこのレベルが一番楽に検査が受けられるのは間違いない事実なのです。

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