大腸の検診

便潜血検査とは?

便の中の見えない血液を試薬で調べるのが便潜血検査です。食事で採った肉などに反応してしまう試薬を使っていた時代もありましたが、現在はヒトの血液のみに反応する試薬を用いています。陽性となった場合は、精密検査をすることになっています。

しかし怖いのは、『大腸の病気があっても、出血していなければ陽性とはならないこと』です!また出血していたとしても、採便した部位に血がついているとは限りません。また検査法の不備で陰性となることもあります。いろいろ工夫されていますが、概略的にたとえ2回法でも進行癌で5~10%、早期癌で40~60%が便潜血陰性になるとの報告もあります。早期の大腸癌やポリープでは出血により便検査が陽性になることは逆に珍しいのです。

つまり、便潜血がもし癌により陽性になっているとしたら、その癌はもはや出血までしている進行癌の可能性が高いことになるのです。

過去の大腸集団検診全国集計(人)

受診者総数1,896,859 
便潜血陽性者数108,783
問診にて精密検査16,873
要精密検査数128,818
精密検査受診者数83,100
発見大腸癌3,239
うち早期癌1,820

検査法の種類と便検査の問題点

検査法の種類には触媒法や免疫法がありますが、最近では免疫法が多く用いられています。この方法は、免疫反応を利用して人のヘモグロビンだけを検出するため、食事や鉄剤(貧血の薬)の影響を受けず、また上部消化管出血(胃や十二指腸の出血)ではほとんど陽性とならないため、大腸がんなどの大腸出血(下部消化管出血)の診断に広く用いられているのです。

しかし、痔で陽性になることがあります。自分で自覚症状の無い痔の方の頻度はかなりいらっしゃるので、不必要なガンの心配、不必要な検査がおこなわれることになることも事実です。「便検査」は簡単な検査なので広く普及していますが、精密検査を担当する内視鏡専門医が十分な数いないのが現在の状況であり、また不慣れな大腸カメラの挿入から患者様に苦痛を与えてしまい、「大腸カメラは痛い!」というイメージを植え付けてしまったことも事実なのです。

前述のような問題から、大腸の専門施設(大腸を専門に扱っている施設は少ないですが・・・)が患者さんに便潜血検査を勧めることはまずありえません。特に大腸がんチェック により大腸がんの心配が強い方は便検査でなく最初から精密検査をされることをお勧めします。もっとも信頼性の高い精密検査は大腸の内視鏡検査です

進行した大腸がん

便潜血反応陽性(+)の場合の検査の流れ

大腸がんは早期に発見すれば、ほとんど治ります。便潜血反応陽性(+)の方は、必ず大腸がんの検査を受けましょう。


※参照:『便潜血反応検査を受けましょう』 
(平成17年 足立区医師会大腸癌検診委員会作成)

大腸の検査は安全に楽に行えます!

注腸X線検査

バリウムを大腸に注入し、空気を入れてX線撮影をし、大腸の全体像や微細な病変の診断を行います

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)

内視鏡を大腸に挿入して、直接観察して微細な診断を行います。観察中にポリープを切除したり、病変を採取し、調べることもできます。

注腸検査

肛門から管をいれてバリウムを流し込んだあと、空気を送り、透視台の上で、腸を撮影します。バリウムや空気を盲腸部(大腸の一番奥)まで送り込むために台の上であっちこっちをむいて撮影していきます。

検査時の疼痛はあまりありませんが、おなかが張って苦しい時があります。前処置(検査前の準備)は基本的に大腸内視鏡の時と同様です。 結果的に異常があれば、大腸内視鏡検査が必要になります。

大腸検査を比較:大腸検査の特長と欠点を比較

大腸がん発見のための、大腸の検査には、いくつかの種類があります。ここでは、長所、短所を含め、それらの検査を比較してみました。

大腸検査の特長と欠点

検査項目特長欠点
血液検査簡単。医師の技術を要しない。早期発見には役に立たない。
遺伝子診断癌の本質にせまる検査。まだ実験段階。
便潜血検査簡単。医師の技術を要しない。早期発見には役に立たない。
痔でも陽性になる
バリウム検査現在では補助的な意義しかありません。医師の技術で正確さ、苦痛が大きく異なる。下剤の準備が必要。見落としがある。
内視鏡検査癌を確実に診断できる。同時にポリープ切除もできる。医師の技術で正確さ、苦痛が大きく異なる。下剤の準備が必要。

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